ウサギのMimi〜アラフォー風俗嬢の恋日記〜

アラフォー風俗嬢Mimiの恋愛あり笑いありの日常を綴ります。

第4話「秘密の恋・後編」

あの、夜景が宝石のように煌めいた真冬日に、潤一に出会い、熱く抱かれたことを、まやは、思い出していた。

 

「まや……どうした?」

いつものホテルに向かう道。

信号で停止した潤一が、じっとこちらを見つめている。

 

「ううん、なんでもないよ」

まやは照れ笑いしながら首をふった。

 

「まや、もうすぐ出会って半年だよ。

出会った当初は、『嘘つき!別れる!』って、まやは俺に何度も怒ったり、泣いたりしていたね。

だけど…今もバカな俺のそばにいて、こうして優しく笑ってくれる。

俺は、幸せだな。ありがとう。」

 

「わたしも……潤一に出会ってほんとによかった。こちらこそだよ。

潤一に、たくさんたくさん愛されて、

毎日が、幸せなの。」

 

「可愛いなあ…」

潤一は、左手をほどいて、赤らめたまやの頬を優しく指で撫でた。

 

「なあ、まやが行きたがっていた、南の島。

来月……行かないか?

2日くらいなら、うちをあけれる、て話してたよね。

まやに、あのきれいな夏の砂浜を見せてあげたいんだ。」

 

「…」

 

「どうした?」

 

「……あのね、潤一……」

 

潤一はまやのただならぬ様子に不安を感じて、クルマを、ホテルの近くの道に一時停止させた。

 

「まや、どうした?言ってごらん。」

 

「潤一……わたし、お金がほしいの。」

 

「うん……以前、話してくれた借金のこと?」

 

「うん……」

 

「俺はまやを助けてあげれなくはない。

だけど、俺は……まやの旦那じゃないからさ。

俺がまやにお金を渡すのは、違うなって思うんだ。

旦那さんに、相談してみた?

代わりに返済してほしいって。」

 

「……うん……だけど、無理だって……友達や、両親にも聞いてみたけど、ダメだった……」

 

「そうか……」

 

「潤一、私ね。高時給のお仕事、やってみる。」

 

「……!

まさか……以前話していた、デリヘル?」

 

「うん、そうだよ」

 

「本気なの?!」

 

「うん。実はね……きょうの昼間に、何件か、メールで問い合わせたの。そしたら、1件のお店が、『ぜひうちに来て下さい』って言ってくれて、明日、面接に行くの。」

 

「あ……明日?!」

 

「うん」

 

「マジか……

まや、それは……俺に聞くまでもなく、自分の中でで全部決断したことなんだな。既に…」

 

「……そうなの。ごめんなさい」

 

「……ショックだよ……」

潤一は深いため息をついて、シートに沈みこんだ。

 

「まや。俺がまやにお小遣いをあげないのは、風俗の女の子みたいなずさんな扱いを、まやにはしたくないからだ。お金を渡すんだから、なんでもやれ、みたいな。

そんな、俺が今まで付き合ってきた、昔の彼女みたいな関係になりたくないからなんだよ。

まやが、本気で大切だからこそ…

最初は、確かにセックスや、変態的プレイを受け止めてくれる、可愛い彼女としてしか、みていなかったさ。

だけど今は……

ホテルに向かっている俺が言うのもなんだが、カラダだけじゃない。

まやを本気で、愛しているんだ。

頼むから、考え直してくれないか。」

 

「……だけど……借金は、返したいの。」

 

「お金の、ためだけか……?まや」

 

「……」

 

「ほんとうは、本気で、風俗嬢ををやりたいんじゃないのか?」

 

「……そうかもしれない。

だけど……今は、わたしの生活を守るためよ」

 

「……わかった。

まやはいつも、自分で全部結論出してから報告してくるもんな。迷いがない状態になって初めて、俺に話してくれる。いつも。

俺はまやが、どうしたらいいのかわからない状態から、隣にいて、見守っている存在になりたかったんだ……。

まや、大好きだけど……

彼女が風俗嬢であることを、黙認することは、俺にはできない。ごめんな。」

 

「……いいの……」

まやは、瞳を潤ませながら、俯いた。

 

「まや……バカな子だ」

潤一は思わずまやを抱き寄せるが、

まやは俯いたままだった。

 

「このままうちまで送るよ……」

潤一はぽつりと呟き、真夜中の道を、めいっぱいのスピードで、クルマを走らせた。

 

2人は、それぞれ、窓の外を流れる景色を見ながら、押し黙って、明日へ思いをはせていた。